ネタ帳

数学ネタの備忘録です。

和積公式の作図

前回の記事では、ふつう和積公式で解くような問題を、様々な解法で解きました(まだご覧でない方は是非ご覧ください)。

mel9.hatenadiary.com


今回は解法4の図をもとに、和積公式を作図で確かめたいと思います。紙とペン、定規とコンパスを用意して、実際に追ってみてください。

確かめるのは\cos \alpha +\cos \beta =2\cos \frac{\alpha +\beta }{2} \cos \frac {\alpha -\beta }{2} で、0^\circ < \alpha < 90^\circ ,0^\circ < \beta < 90^\circとします。


0.準備

①円Oを描き、直径ABをひく
\angle AOX =\alpha ,\angle BOY =\betaとなる2点X,Yを、ABに関して同じ側にとる

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まずは円Oを半径1の単位円としてしまいましょう。
図では垂線が下りていますが、垂線の足を結んだ線分の長さが\cos \alpha +\cos \betaとなります。


1.\cos \frac{\alpha +\beta }{2},  \cos \frac {\alpha -\beta }{2}をつくる

\angle XOYの二等分線を引き、円Oとの交点のうち直線ABに関してXと同じ側にあるものを点Pとする
PからOYに垂線を下ろし、足を点Hとする
⑤直線OBに関してYに対称な点Y'をとる
\angle XOY'の二等分線を引き、円Oとの交点のうち直線ABに関してXと同じ側にあるものを点Qとする
QからOY'に垂線を下ろし、足を点Iとする

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\angle XOY,\angle XOY'はそれぞれ180^\circ -(\alpha +\beta ) ,180^\circ -(\alpha -\beta )となります。
\angle POY,\angle QOY'がその半分の大きさの角となり、PO=1,QO=1ですから、PH=\sin \frac{180^\circ -(\alpha +\beta) }{2}, QI=\sin \frac {180^\circ -(\alpha -\beta) }{2}となります。
したがってPH=\cos \frac{\alpha +\beta }{2}, QI=\cos \frac {\alpha -\beta }{2}です。


2.\cos \frac{\alpha +\beta }{2},  \cos \frac {\alpha -\beta }{2}同士を掛け合わせる

O'A'=OA,O'H'=PHとなる3点O',H',A'を、同一直線上にこの順にとる(とれる)
A'Q'=QIとなる点Q'を直線O'A'外にとる
H'を通りA'Q'と平行な直線をひく
O'Q'と⑩の交点をM'とする

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新しいフィールドで、比を用いて線分のかけ算を行います。
O'A'=1なので、O'A':O'H'=A'Q':M'H'より、M'H'=O'H'\times A'Q'です
よって1の最後の式より、M'H'=\cos \frac{\alpha +\beta }{2} \cos \frac {\alpha -\beta }{2}となります


3.\frac{1}{2}(\cos \alpha +\cos \beta )との一致を確認する

⑫点X,Yから直線ABにおろした垂線の足をそれぞれ点S,Tとする
⑬線分STの中点をとり、点Mとする
⑭コンパスでSM=M'H'を確認する

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ここまで来ればあとは確認だけです。最後に綺麗に一致したときはなかなか感動します。実際に描いてみたのが以下の写真です。

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実際に描いてみると、円Oを利用することで、コンパスを使う回数をかなり節約できることが分かりますね。基本作図を殆ど使っているのでその確認がてら一回やってみては如何でしょうか。